声を掛けたくせに、
柊は何も言い出そうとしない。






なんだ・・・・・・?






「貴大はね?」


遠慮がちに呟かれた、
消えそうなほど小さな声。



その声を見逃さないよう、
必死に耳を傾ける。




「夏祭りの時、
好きな人いるって言ったでしょ?


・・・・・・それって誰なの?」




言い終わると顔を上げた柊。



絡まる視線に、
心臓が止まりそうになった。




一瞬、息も出来なくて。

瞬きもしてなかったと思う。




だって、いまさら―――






――――そんのこと聞かれるなんて、
思ってなかったから。