一瞬、鼻をかすめた甘い香り。
俺の腕の中にある、
細いけど柔らかい身体。
そうだ。前にもこんな事あった。
あの日の図書室――――
あの日、柊は確かに俺の腕の中にいて。
あの日、俺は1番幸せだった。
その幸せが一気に崩れたのが、
――――その直後。
あぁ、俺はバカだ。
もう柊は“諦めた”のに。
まだ胸のどこかで、
柊を求めてる何かがある・・・・・・
ぎゅっと抱き締めた腕を解き、
何もなかったかのように振舞う。
「よかったな、出れて。
またあいつらにも仕返ししてやらねーとな」
声が震えるかと思った。
それぐらい俺は、
――――怯えてた。

