貴大は、いつもそうだった。
素っ気無さそうに見えて、
実は誰よりも人のことを見てる。
人が困ってるのを見つけると、
そっと近寄って――――
素っ気無い優しさを残すんだ。
「あ、窓あった」
「へ?」
「ほら、棚に隠れて見えなかったけど。
ここからなら多分出られるよ」
「あぁ、うん・・・・・・」
いきなり振り返った貴大に驚き、
曖昧な返事しか出来ない。
窓の位置が高いからか、
そのにあった棚を登り始める貴大。
とたとた貴大に近づいて、
その背中を見守る。
貴大と話をしなくなったのは、
たぶん“あの日”から。
なにが原因かなんてわからない。
ただ1つ分かるのは、
貴大の中のあたしをポジション。

