「は? え、ちょっ」


「もう!・・・・・・黙って」



軽く睨みながら小さな声でそう言うと



「はい・・・・・・」



やっと貴大が大人しくなった。




気を取り直して貼ろうとすると、
思ったりより顔が近くてドキドキした。



あたしの視線の先はバンソーコーだけど、
貴大はまっすぐあたしを見てくるから

もっともっとドキドキした。



ドキドキに耐えられなくて、
早く貼ろうと思うんだけど思うように剥がせなくて、



やっと剥がせた。



そう思って顔を上げた瞬間




――――――――え?




あたしの鼻を掠める本の匂いは、
きっと貴大のものであろう香りに変わってて


冷房の冷たい風で覆われていたあたしの体は、




貴大の熱いくらいの体温で包まれていた。



これは抱きしめられてるの?


そう思うのは時間が掛からなかったけど、
思うように声が出せなかった。



右頬に掛かる貴大の髪がくすぐったい。