バレないようにちらりと盗み見すると、
貴大も気まずそうにあたしを支えてた手でぽりぽり頬っぺたを掻いてた。



あれ・・・・・・?




「貴大、目の下切れてない?」


「え?」



さっき離れた分また近づくと、
確かに左下の頬が切れていた。

少しだけど、血も出てる。



「あー、本当だ。
落ちてきた本で切ったんかな?」


「えっ、嘘! ごめんね?」


「んー、大丈夫っしょ。こんくらい」



そういいながら、
手でぐいぐい血を拭い始めた。



「ちょちょちょ、ちょっと!」


「へ?」


「そんなんじゃダメだよ!
ちゃんとバンソーコーとか!」


「んなの、持ってないよ」


「あたし! あたし持ってるから!」



セーラーの胸ポケットから
バンソーコーを取り出して、

倒れて脚立を建て直し、
1段だけ上に上ると貴大と目線が近づく。




「え? 何して・・・・・」



「あ、じっとして?
あたし貼ったげるから」