葵は俯いて親指の爪をかじっている。

動揺したり緊張したりしたときの葵の癖だ。


そして
葵の手が膝の上に戻っていった。



「……あの…
養女とかそうゆうのよくわからなくて、どうすればいいかもわからないんですけど…

でも、あけみさんたちには昔からお世話になってるし、もう家族みたいなものだし…

あけみさんたちが良ければ、私をここに置いてください。

迷惑はかけません。

養女としてここに居させてください。」



「…葵ちゃん……。迷惑なんてかけてもいいんだよ。大人を頼っていいんだ。もう一人じゃないからね。これから宜しくね」



「…はい…っ」




葵はまっすぐに父さんと母さんを見ていた。


もう葵には
涙の影はなかった。