猫と君



「…い!…けい!!
…慧!!!」


「あ!?……葵」


「今日は陸上部休みでしょ?
早く帰ろー」


「おぅ…」


「どうしたのさ
ぼーっとしちゃって」


「いや…なんでもない」


「ふぅん」



気付いたらもう放課後。
授業を受けた記憶がない。



「今日の夕飯はなにかなぁ♪」


鼻歌を歌いながら
スキップして俺の前を歩く。



そんな葵を見て
やっぱ好きだなぁ…なんて
思ってる俺は

今すごく緩んだ顔してんだろうなぁ。



半年前には
見れなかった葵の姿。


本当によかったなって思う反面、

本当は辛くて俺のいないところで
また泣いてんじゃねぇかなって


朝、赤い目をした葵を
たまに見ることがある。


どうしたと聞いても
なんでもないの一点張りで

時々自分の頼りなさに
苦しくなる。