背中を向けるだけで精一杯のあたしの背中に、星がポツリと呟いた。




「あさ、ありがとう」

「えっ?」



星の素直なまでのお礼に、あたしは驚いてきょとんとした顔をしたまま星の方へと顔を向けた。



「俺さ、家族いなくて愛とか知らないし…誰かに優しくされた事とかあんまりなくてさ」

「星…」



そう話す星はどこか寂しげで、そのまま消えてしまうんではないかと心配になる位に小さく感じた。



「だから人に優しくっていうのも、なんだか上手く出来なくて。あさが初めてなんだ」

「えー…?」




その言葉に、あたしは星の顔を覗いた。




「優しくしたいなとか思う前に、自然とそうしちゃうんだ。ほんとあさは凄いよ」




その言葉に、胸が苦しくなった。






どうしてなんだろうか。






神様は意地悪だ。



星はきちんと人を思いやれる人なのに、家族を知らない。



温かさを知らないー…。