あたしの顔に血が散った。

「あっ、あああぁ……」 

 ハナダさんは顔を抑えうずくまると、砂漠の中で水を求めている人のようなうめき声を出して泣きはじめた。

 顔を抑えた手の下から、涙の代わりに血が流れ、地面に赤い染みを作った。

 誰かが叫んで、みんな逃げ出した。

 そして校舎裏に、あたしとクロカワさんとハナダさんしか居なくなった。

「いや……本当に切るつもりじゃなくて……。ごめん、ごめん……ハナちゃん」

 クロカワさんがハナダさんに駆け寄った。

 ハナダさんの泣き声が、風に揺れる木の葉のざわめきの中に消えていった。