問い掛けに反応したイサムが、ドア越しにぽつりぽつりと話し出した。

「なあ、ヨシキ。あの男の言ったこと覚えてるか?
『ママごと気分で、お遊び感覚で仕事をしてる若造が』そう言ったんだよ。
俺さ、その通りだって思った。その通りだろう?
ここにくれば、ヨシキやエミさんや真梨子に会えて、楽しく働ける。
そんな軽い気持ちでいた。たしかに『仕事』という自覚は薄かったように思う。
違うか?ヨシキだって、このバイトが楽しくなかったか?」

予想外の話の内容だった。

仕事としての自覚・・・たしかに無い。

「ああ、僕も『働く』という自覚はなかったかもしれない。いや、あることはあった。時給を貰っていたんだし。
でもたしかに、少しくらいカクテルが作れるようになったからって、有頂天になっていたのは事実だよ」

「そうだよな。俺もヨシキも、その程度の感覚だったんだ」