9月のある日、なかなか売れない外国産ビールに業を煮やした店長が、「名案だ、名案だ」と、にこにこ顔で、開店前にみんなを呼び寄せた。

今日も似合わない黒の蝶ネクタイをしている。

「みんな聞いてくれ。ビールフェアをやろうと思うんだ。期間は来週の一週間。
『世界のビールが飲み放題!』っていうのを」

ビールフェア?
飲み放題?
なんだ在庫処分じゃないか。

「店長、それって在庫処分ですかー?」

僕の気持ちを代弁するように、店内で一番のリーダー格である、姉御肌のエミさんが訊ねた。