次の仕事に向かう道中も暮羽さんの車の中でチカの事を考えていた。


僕だったら…自分の兄を殺した人間にあんなに無邪気に接する事が出来るだろうか…


いや出来ないだろうな…


多分力に任せて気が済むまで…相手を切り刻んでる…



…僕はそう言う人間だ。







「…そう言えば、シッキョウに会ったんだってな」

突然そんな事を言い出す暮羽さんに、ついさっきの出来事を監視カメラか何かで見られているのかと不安になったが、もう一つ心当たりがある事を思い出し心を落ち着けた。


「…黒スーツの人…大丈夫でしたか…?…耳…」

暮羽さんの様子を伺うようにそう言うが、暮羽さんは表情を変えず真っ直ぐ正面を見つめたままだった。


「最近顔を見てないからわからないな」

平然とそう言ってのける暮羽さんに、僕が耳を吹き飛ばしたあの男が首になったか、命を落としたか、そのどちらかの運命をたどったのだと言う事が容易に予想できた。