そんなノイローを若干引いた目で見ながら、袋の中から最後の砦を取り出す。
「これなら食べられるかな…」
プラスチックの容器の蓋を取ってやり、それにスープンを突き刺して夢太に持たせた。
夢太はスープンが刺さりプルプルと震えるオレンジ色の半透明の物体を興味深く見つめている。
コレも駄目か…
一考に手をつけようとしない夢太に途方に暮れていると、じー…と穴があく程に夢太が見つめていたソレをノイローが夢太の手から奪った。
「いらねぇーなら俺が食ってやる」
そう言って、オレンジ色の物体をスプーンですくい、口に入れたノイローは、やっぱ甘ぇ…と眉間に皺を寄せた。
「ちょっ、何でノイローが食べるんだよ?」
慌てる俺を尻目に、ノイローは夢太の方に向き直った。
「俺甘い物あんまり好きじゃねぇんだよ、だから口開けろ」
夢太はそう言うノイローにポカンとしていたが直ぐに言われた通りに口を開けた。
「ふ…ぐっ、」
「…うめぇーだろ?」
強引にスプーンを夢太の口に突っ込んで誇らしげにそう言うノイローに驚いて、慌てて夢太の様子を伺う。
夢太は警戒するように口に入れられた物に舌をなぞらせていた。
その光景は何とも奇妙な感じがしたが、直ぐに夢太が俺達に初めての笑顔を向けたので俺とノイローも自然に頬が緩んだ。

