俺は特に空腹ではなかったので、部屋の隅で俺達のやりとりを目を丸くして見ていた夢太にこっちに来るように手招きした。
オズオズと俺達の元に近づいてくる夢太を見守りながら、黙って俺の方に腕を伸ばしてくるノイローに側にあったペットボトルを渡した。
「お腹すいてるだろ?好きなの食べな?」
そう言って夢太の目の前に買ってきたものを並べるが、夢太は黙って見つめるだけで手に取ろうとはしなかった。
確かに見た目はちょっとグロテスクな気もするが、パッケージに小さなお子さんにも大丈夫、と書かれていたから間違いではないと思う。
「気に入らないの?」
こちらを馬鹿にしているように見える犬のイラストが描かれている赤い箱を見つめたまま固まっている夢太にそう尋ねるが、ひたすら赤い箱を凝視するだけだった。
「…アレジそれドッグフードなんじゃねぇの?」
「違うって、ほら小さなお子さんにもって書いてあるだろ?俺もそこまでは抜けてないよ。」
いまいち信用していないノイローに赤い箱を突きつけるとノイローは顔をしかめた。
「これが人間の食いもんなんて終わってるな…」
「…ノイロー、夢太がますます食べる気無くすから。」
そう咎める俺に、ノイローはあっかんべーをする。
まったく、どっちが子供だかわからない。

