夢太と一緒に生活する事になって一番最初にぶつかった壁は、夢太が全くといっていい程に“普通”を知らないと言うことだった。






「…何でこんなに広いのにそんな隅っこにいるの…?」


ホロに用意してもらった少し古びた一軒家に初めて足を踏み入れたその日。

何もなくガランとした部屋の隅っこに身を寄せる夢太にそう尋ねると夢太は不思議そうな顔で俺を見上げてきた。


名前がないと言い張るから仕方なくノイローと俺で名前をつけた。

夢太と言う名前が気に言ったのか呼ばれるたびに少し表情が明るくなる。


それでも普通の子供よりは表情が固いと思う。



「ほっとけほっとけ、隅っこが好きなんだろ?それより腹が減った…何か食おうぜ?」



3人でも少し広い家の中を一通り見て廻っていたノイローが二階から降りてきた。


ノイローはわざと俺の見える位置に横になると俺に視線を送り、空腹を訴えてくる。



なんだよ…何か買いに行ってこいって?



俺は基本的に自由人なノイローを少し羨ましく思いながら、残り少ないお金を持って買い出しに出掛けた。