ずっと話していたかったけど、いつ帰れるかわからなかったからお金は大事にしたかった。
アレジにぐっすり休むように言って電話を切った。
僕はヘブンズ ハウスまでの道のりを出来るだけゆっくり歩いて帰ることにした。
なぜならもう少し…この幸せな余韻を味わっていたかったから。
たった1日…いや2日ウチを出ていただけなのに…ノイローとアレジに会いたいと思ってしまうのはヘブンズ ハウスという場所がそうさせるのか。
それとも僕が弱虫で臆病だからなのかは今は考えないことにした。
翌日、朝から早々に2つ仕事を片付けて次の仕事までの少ない空き時間に訓練場を覗いてみた。
中途半端な時間だったから居ないと思ったけどどうやら昼休みらしく、床に腰を降ろしてパンに噛みついているチカの姿があった。
そしてもう一人、見たことのある青年の姿があった。
…そう、僕がここに戻って来て直ぐに、正面の入り口で無意識に黒スーツの男達に発砲してしまった時に会ったあの青年だ。
「夢太、約束通り連れて来たぜ?こいつが今のここのNo.1のシッキョウだ」
シッキョウと呼ばれた青年は僕の方を見てニッコリと微笑んだ。

