「明日からは仕事を増やす」
そう言って暮羽さんは複数の灰色の封筒を僕に手渡すと、僕をヘブンズ ハウスの前に降ろして車を走らせた。
おそらく家族の元に帰るのだろう。
そんな暮羽さんを恨めしく思いながら僕はあることに気づく。
「なんで…今まで気づかなかったんだろ」
僕は自分の部屋に戻らずにヘブンズ ハウスとは逆の方向に走った。
確かこの辺りに一つだけあった筈。
僕の記憶が正しければ必ずある。
どこ?
6年もたってるからもう無いのかな、
青白い光を放つ街灯の下にそれはあった。
あった…
馬鹿だ僕…お金部屋に忘れてきた。
慌ててもと来た道を戻ったが、そんな事は気にならないほど足は軽かった。

