古い蛍光灯がチカチカついたり消えたりするのに気を取られ、ターゲットに張り付いて離れないボディーガードの撃った弾が右腕にかすってしまった。

服を裂いただけで済んだが、やはり気が緩んでいた見たいだ。

でも同じ間違いは二度と犯さない。












「…その顔だと巧く殺れたみたいだな」


時間通りに向かえにきた暮羽さんに、テイッシュでくるんだターゲットの証拠を渡すとそう言われた。


暮羽さんには今の僕はどんな風に映っているのだろうか。


僕が車のドアを閉めるのを確認して車を出す暮羽さんの顔を黙って見つめた。


「しかしまぁ…ブランクがあるから腑抜けてしまったものだと思っていたが…そうでもないらしい」

馬鹿にしたように笑う暮羽さんにやりきれない気持ちで一杯だったが表情に出さなかった。


「…貴方は簡単に忘れるような育て方をしたんですか」


拳を握りしめ、そう言うと暮羽さんはハンドルを切りながら笑みを浮かべた。


僕が今何を考えているか貴方にはわからないでしょ?


僕は今涙が出そうになるのを歯をくいしばって耐えているんです。

本能的に血を求めてしまった自分の浅ましさを改めて思い知らされて怯えているんです。

感情を忘れ、人を殺める事を楽しんでしまった。

そんな自分が怖くて堪らない。


これなら何も知らずにいた方がよかった。

いっその事、人間の温かさを知らないで気持ち悪い生き物でいた方がよかった…なんて、そんな事僕は絶対に思いはしない。


僕に幸せな時間をくれたノイローとアレジを否定するようなことは絶対にしない。


流れて行く暗闇の世界を見つめ思う事は一つしかない。


ウチに帰りたい。



ただそれだけだった。