もし今ここで僕が死ねば…もう1人僕のような醜い修羅を作ってしまう。


それは絶対に出来ない。





僕が反撃した事に驚きそして怒り、こっちに向かって発砲してくる青年をかわす事に集中する。


腰に刺さってある銃を引き抜こうとしたが弾を入れてない事を思い出してやめた。


仕方なくジャックナイフを手に取り、“マニュアル通り”に僕と一定の距離を保とうとする青年に向かっていった。

















「やめ…ろ…っ」

僕に銃を奪われ顔を青くし涙を浮かべ怯える青年に、床に抑えつけ喉に押しあてていたナイフを外し、それを青年の目の前にかざした。









「…僕にはまだやらなきゃならない事がある…だから死ぬ訳にはいかないんだ。…もしキミが僕を殺そうとしてくるなら、僕はキミを殺さなければならなくなる」


青年を真っ直ぐに見つめて、すがるようにそう訴える。


僕の中の修羅が目を醒ます前に青年に僕の思いが伝わるようにひたすら祈った。


青年は青ざめた顔を歪め、わかった…と小さく呟き僕から顔を反らした。


僕は青年が僕に向かってくる気がない事を理解し、青年の上から体を退けて青年に銃を返した。


ナイフを元の位置に戻す僕の様子を恨めしそうに座り込んで見つめる青年に、僕は手を差し出した。

青年は眉間に皺を寄せたがその手を掴んでくれて、今頃どっと汗がふき出してきた。








「……俺を殺そうとする程…やらなきゃならない事って何なんだよ?」


彼にそれを言えば後戻りは出来ないと思ったけど…彼には知る権利があると思い、なるべく言葉を濁しながら僕が戻ってきた理由と僕のやらなきゃならない事を青年に話すことにした。