以前と違うことにもう一つ、僕にある程度の自由が与えられたということがある。
これは暮羽さんが、弟の件がある限り僕がここから逃げ出すことはないと思っているからだ。勿論それに間違いはない。
「よく眠れたか?」
僕に仕事の内容を伝える為に僕の部屋がある棟の部屋に来ていた暮羽さんは嫌味を込めて僕にそう尋ねる。
「…はい」
負けじとそう答える僕に、暮羽さんは愉快そうに笑った。
「暮羽さん、話があります」
真剣な顔でそう言うと暮羽さんはデスクから灰色の封筒を取り出しながら、なんだ?と聞き返した。
「…昨日眠らずに考えたんですけど、貴方が欲しいのは別に僕自身ではなく昔の僕を越える人材ですよね」
「そうだ」
即答する暮羽さんに安心しながら話を続ける。
「僕が他の子達の誰かに僕を越えさせます、だから指導する許可をください」
僕がそう言い切ると暮羽さんは笑い出した。
「お前があの子達を指導するだと?笑わせるな…」
完全に馬鹿にした態度に僕は反論したかったが、ここで口を挟むのは得策ではないと思い口をつぐんだ。

