「憎いって…どうして?」

アレジがそう尋ねても言いたくないらしく首を横にふった。

まるで自分を責めるように目を泳がすガキに、根っからの修羅ではない事を何となく悟る。


話を聞いてあの女についての大体の見当がついたので俺達は質問を止めた。




「お前も俺達に聞きてぇ事があったら聞いていいんだからな?」




「…ほんと…?」


こっちばかり質問責めするのも可哀想だと思い、俺がそう提案すると話に食いついてきた。


「嘘言ってどうすんだよ、なんだ聞きたい事があったのか?」

俺がそう言うと少し嬉しそうな顔をしたような気がした。




「昨日…布団降ろしてくれたでしょ、あれ…嬉しかったけどっ…どうして?」


俺は思わずアレジの方を振り向いてしまった。

アレジもコイツのする質問のオカシさに引っ掛かったらしく不思議そうな顔を返してきた。

俺は少しずつその紐をほどいていく事にした。


「普通はな、ベッドが有れば誰もが何も考えずにベッドで寝るもんなんだよ。でもお前はそれをせずに床で寝るっつーからせめて布団だけでも…と思ったんだよ俺は。」

俺がそう言うとガキは首を横にふった。


「そういう意味じゃない…、なんで…僕なんかに…そんな事をする必要があるの?

この家の床は十分温かかったよ」


…待て待て待て、床が温かいとかどんな次元の話だ。

「…お前は普段どこで寝てんだよっ」

説明するのが難しいのか唸りだした。


「…ぇっと、広くて…真っ暗で、冷たいところ…?」







これはもう確実だ。


コイツは虐待されてる。


しかも1人とかじゃなくて大勢にだ。


コイツの周りにいる人間全てが…コイツに異常な生活を普通のものだと思わせている。


コイツの私生活を想像するのすら俺には怖くて出来なかった