自分で出来ると言うのは本当らしく、馴れた手付きで自分の左腕に針をさす様子をみると流石に何も言えなくなった。


あれの中身は栄養剤や自由に動かせる体を維持させる薬やらが入ってるらしいが、これで何故コイツがこれほどまでに痩せ細っているのか説明がつく。


いくら死なねぇからってこのままだとこのガキは骨だけになっちまうんじゃないのか…?
そう思わせる程にそれはとても見られた光景ではなかった。


一体コイツの親は…どういう育て方してんだよ…


俺は怖いもの見たさなのかなんなのかガキから目を背けられなかったが、アレジはスタスタとガキの側まで歩いて行きガキと同じ視線になるように腰を曲げた。


俺達が自分に危害を加えないと言う事を理解したらしくアレジが近づいても極端に警戒する事はなかった。







「昨日はごめんね…ちょっと疲れてて…」

そう言って苦笑いするアレジにガキは小さく首を横にふった。


「…だいじょうぶ、…なれてるから」


特に気にした様子もなく見つめ返すガキにアレジの表情が強張ったのがわかった。


俺はそんな二人に近づきアレジの肩を叩く。

アレジは俺の方を見ると、体を起こして少し後ろに下がった。


「昨日見たいに少し話そうぜ?」


俺がそう言うと直ぐにコクンと頷いた。



「先ずは名前から教えろ。言いたくないなら言わなくていいからその理由を言えばいい」

俺の質問にまた一つ頷く。


「…僕には…名前がないから答えられない、…ハウスの人たちが僕を呼ぶ時に使う名前はあるけど…キライだから言わない」


意外にもスラスラと言葉を話す様子をみると禁じられているから話さないだけで、話す事自体は嫌いじゃねぇ見たいだな…。


「ハウスって言うのはお前の家か?」

そう言うと少し考えてからまた一つ頷いた。