と…言うわけで、さっきの部屋に戻らざるえなかった俺は、得体の知れないガキと睨み合いをしている。

睨み合っつっても向こうは無表情な訳だから一方通行である訳だが。

俺だって既に相当お世話になっているホロにこれ以上負担はかけたくはない。

だがな…ホロは知らねぇから添い寝しろだの何だの言うが…アイツはただのガキじゃねぇんだぞ…?

人間をスプラッタにする危ないガキなんだぞ?


俺は一生ビーフシチューが食べられねぇかも知れないという瀬戸際をさ迷っていると言うのに…



勘弁してくれよ…


全く眠ろうとしないガキにどうしたもんかと考える。

一定の距離を保ち、うんうん唸る俺を見ていたガキが突然ベッドを降り始めて思わず構えてしまう。


「な…何だよ、トイレか?」

ガキは俺の方を振り向き、首を横に振った。

部屋を見渡して、俺との間に一番距離が出来る壁に寄り添うように体を横に倒した。



はぁ?意味がわかんねぇ…


っーか…んな所で寝られたら俺がホロに殺される。


「おいガキ、ベッドに戻れ」

声に反応して俺の方を見つめるものの、首を横にふるだけだった。
相変わらず言葉を口にしない事にイライラがつのる。


俺も気が長い方じゃねぇ…


「言いたい事は口で言えよ」

乱暴にそう投げ掛けるとガキは不思議そうな顔をした。


「…あんまり…喋るとおこる…」

取り合えず今は言葉を口にしただけよしとするか。


「喋らねぇ方が怒るっつーの…、何でベッドで寝ない?」

そう問うと再び目を丸くした。


「…ベッドは…チュウシャする所だから」

……チュウシャって注射の事か?

って事は病院と勘違いしてるのか…コイツ。

「ここは病院じゃねーからいいんだよ、まぁ医者はいるけどな」

俺がそう言うと、しってる、と小さな声で言葉を返してきた。