黒い塊に見えたのはその子供が着ていた服が黒いせいもあったが、それだけが理由ではない。


顔や首など全てにアノ女の返り血を浴びていて、それがカーテンの影で黒く見せていた。


俺達がこの子供を死体と間違えたのも仕方がない。


手や足は折れそうな位に異常な程細く、頬は痩けて窪み、本来あるべき子供らしい曲線は全くと言っていい程無かった。

子供と言うよりはミイラの出来損ないと言った方がまだしっくりくる。


微動だにせずにただ床のある一点を見つめ続ける姿はたいそう気味が悪い。


俺は足を折り曲げその子供の足首に触れた。


そこからは確かに血液が流れている温かさが感じられ生きていることがわかった。












「生きてやがるコイツ…」


驚きを隠せないでいる俺とは反対にアレジは表情を変えない。




「確かなのか?」

そう言ってミイラの出来損ないを上から下まで見定めるアレジに俺は仕方なく子供の手首に触れ脈を確認した。


俺が触れても何も反応しないわりに弱々しくではあるがシッカリ脈は動いていた。


俺が頷いて見せるとアレジはその子供に近づき、少しも躊躇う事なく抱き上げた。


呆然とする俺に視線を投げつけるアレジの行動の意味を時間をかけて理解し、着ていた上着を脱いでアレジの腕の中で人形の様に手足を投げ出す子供に被せた。


おそらくアレジはアノ女の最後を知るまで終われないと思ったんだろう。


俺達は女のアパートを出ると直ぐにバイクに跨がり、医療に詳しい知り合いの家に向かった。