女の部屋の前に辿り着くと、俺は一度アレジと視線を交わしてからドアを数回ノックした。


何の反応も帰って来ない事からこの部屋の住人が留守なのか居留守を使っているのか判断出来なかったが、俺達は居ないなら居ないでドアをぶち破り中で待ち構えているつもりだった。




「…開けるぞ?」


アレジが頷くのを確認してからドアを蹴破る前に、念のためにドアノブに手をかける。

すると中で金属の擦れる音が聞こえた。


鍵がかかっていない事に手間が省けたと喜んだが、直ぐにそんな事は頭の中から消えてなくなった。




ドアを開けた事で溢れだした凄まじい悪臭に俺達は顔を背け、鼻と口を腕で覆った。












部屋の中はまさに悪夢そのものだった。



もはや原形を何一つ留めていない人間の肉片があちこちに散らばり、部屋の壁という壁がバラバラに解体した時に飛び散ったのであろう血で赤く染まっていた。



床に転がる青いマニキュアがぬられた爪の破片から、このおぞましい肉片がアノ女の物だと言う事は確実だった。

その余りの凄まじさに俺達の身体を支配していた怒りは吹き飛び、暫く放心してしまった。


とても人間ではあり得ない獣染みた惨状に俺は寧ろ女に同情した。

部屋の有り様に気を取られ気付かなかったが突如として感じた生き物の気配に俺は銃を構え、アレジは後ろに後ずさった。




薄暗い部屋の中、目をこらし部屋を見渡すとカーテンに埋もれるように壁に寄り掛かる奇妙な黒い塊が存在していることがわかった。

発している気が禍々しいものでは無い事に安堵したものの、銃を構える事はやめなかった。



始めは俺もアレジも余りにも小さいその塊をあの女の弟か妹の死体だと思い一瞬目をそらしたが、手に握られていた大きすぎるナイフと側に置かれていた見たことも無い銃に俺達は直ぐに悟った。




コイツがアノ女をバラバラにしたのだと。