リビングに行くと部屋の角でうずくまり、頭を掻きむしりながら声をあげ続けるアレジの姿が目にうつる。
アレジの視線を辿るように部屋を見渡すと、テレビに寄り掛かるように座っている親父さんとテーブルに覆い被さりこっちを見つめているお袋さんがいた。
二人共額を銃で撃たれていた。
アレジが取り乱している事で返って俺は冷静になれた。
俺は完全に正気を失っているアレジを無理矢理家の外に連れ出すとアレジは道路の脇にしゃがみこんだ。
アレジは暫くの間吐き続け、俺はそれがおさまるまでアレジの背中を擦っていた。
アレジの吐き気が完全におさまる頃には空が明るくなっていて、俺とアレジは錆び付いたガードレールに腰を降ろし、道路を挟んで向かいにある自分の生まれ育った家を見つめて静かに涙を流すアレジの肩を抱いて俺はアレジから顔を背けた。
血の繋がっていない俺を無条件で可愛がってくれたアレジのお袋さんと親父さんは俺の望んでいた家族そのものだった。
俺もこの家に生まれたかったと何度も思った。
正直泣きわめいてしまいそうだったが、側には声一つあげずに静かに涙を流すアレジがいて俺にそんな事が出来る訳がなかった。
俺達は太陽が昇りきるまでそこから動かなかった。
俺はその後、家に入りたがらないアレジに代わって必要な物を持ち出し、アレジの望み通りに慣れ親しんだ家に火を放った。

