俺達がそんな生活を繰り返していたある日、それは起こった。






「お前なぁ…たまには家に帰れよ、とーちゃんとかーちゃん寂しがってるぜ?」


最近手に入れたまさに俺好みの煙草に火をつけながらそう言う俺をアレジはうざったそうに横目で見てくる。


「いいだろ別に、お前がいるし。ノイローが1人いれば十分賑やかだ」

そう言って俺をからかうように笑うアレジが癇に障ったので足を踏んでやった。

イテェよ、と抗議してくるアレジの腕を強引に掴みアレジを家まで引きずって行った。





「大体お前は最近調子に乗りすぎなんだよ」


「何それ、ヒガんでんの?ノイローに彼女がいないから?」


「うるせぇよっ?!」


ギャイギャイ騒ぎながら玄関を開けると直ぐに異変に気付いた。



いつもならおかえり~とアレジのお袋さんが出迎えてくれるはずだった。


それにまだ夜には早い時間だったにもかかわらず家の中は余りにも静か過ぎた。

この時はアレジには言わなかったが微かに血の匂いがしたのを憶えている。




「…お袋?いねぇの…?」


すがるように足早に家の奥に消えていくアレジの後ろ姿を見て俺はそこから動けなかった。



直ぐにアレジの絶叫が聞こえ、俺はそこで初めて家の中に入る事が出来た。