僕は人間のあらゆる欲求のすべてを奪われて何かに満たされることなんかなかった。


だからいつしかその行き場の無い感情を…人を殺すことで満たそうとしていたんだ。


技術では努力と感覚さえ養えば誰でも僕を越えられると思う。


だけどそう言うことじゃないんだ。


最終的に実践で一番重要なのは精神であって技術じゃない。



つねに沢山のものに飢えていて自分の手を赤く染めることでしか自分をコントロールできなくなった人間と、暖かい所で普通の人間として生活している人間とどちらが強いか比べる必要がありますか?



「そんな時にお前が奇跡的に生きていると言うことを聞いたら…取り戻したくなるだろう?自分の手の中に」

暮羽さんはそういって顔の前で拳を握って見せた。


僕はそんな暮羽さんに首を横に振った。


「残念ですが、僕にはもう貴方の望む以前のような力はありません」

そう言って部屋を出て行こうとするが暮羽さんの言葉に足を止められた。


「だったら仕方がない…アキにさせるしかないな。」


この人は何を言い出すんだろう。


勢いよく振り返った僕に暮羽さんは満足そうな笑みを浮かべて僕の方に近づいてきた。

足もとに落ちていた写真をゆっくりとした動作で拾い上げ、僕の顔の前でチラつかせた。












「やっぱり…甘やかして育てると駄目なんだなぁ…?」


その言葉を聴いて僕は床に崩れおちた。