ノイローに新聞と封筒を渡す時に一瞬変な顔をされた。


ごめんなさい、まだ巧く頭の整理がついて無いからもう少しだけ時間をください。


不思議そうな顔をする二人を何とか誤魔化しつつ朝食を済ませた。

二人は僕の事に関しては結構スルドイと思う。


早々に自分の部屋に行き、お腹に隠してあった灰色の封筒を手にとってみる。


封を切るまでに一時間かかってしまった。


封筒の中には白い紙が一枚。


そして広い白いスペースの中央に一言文字が書かれていた。

感情もない薄っぺらい文字で“戻ってこい”とだけ。


僕があそこに帰らなくなってもう6年になる。

ノイローに言われて毎日腕慣らししているから腕が鈍ってるって事は無いだろうけどキレはやっぱり前のままとは行かない。


僕の変わりなら可愛いがっていた他の子達にさせればいいだけじゃないか。


いろんな考えが頭をグルグル駆け巡って頭がオカシクなりそう。

取り合えずこのまま放置していい問題じゃないから指示通り明日会いに行くしかない。


でもね暮羽さん。

残念ながら僕は以前の僕とはまるで違う人間です。


貴方の愛情が欲しいが為に何でも言う事を聞いていたガリガリで痩せっぽっちな子供はもういません。


僕には家族がいる。


僕を人として愛してくれる人達がいるんです。


多分貴方の顔を見たら立ちすくんでしまうと思うけど、…僕はもう醜い生き物に戻りたくないんだ。


お願いします、どうか僕を逃がして下さい。