考えなかった訳じゃない。


あの人にはどんなに隠れても僕を探し出すことが出来る力があることは知ってたから。


でも長い間、ノイローとアレジに大事にされて思い込んでしまったんだ。


ノイローとアレジが入れば平気だって。


夢はいつか覚めるものだって言うけど、まさか…こんな形で覚めるとは思ってなかったよ。


だから今にも崩れ落ちそうだ。


どうしよう


見なかったことに出来ないかな?


ノイローとアレジは何て言うだろう。





何で今更?


要らなくなったから僕を棄てたんじゃないの?


何で今?もっと早くでもよかったのに。


そうすればこんなに涙も出ないのに。


知る筈も無いだろけど僕は涙を流せるようになったんです暮羽(くれは)さん。


僕は涙を上着の袖で拭うと、灰色の封筒をズボンに隠し何食わぬ顔で家の中に入った。



この手紙の事は今はまだ…二人には黙っていよう。