振り向くと、忘れた事なんてなかった笑顔が私を見つめてる。

 言いたい事は沢山あるのに、胸がいっぱいで言葉が出てこない。

「俺の顔、忘れた?」

 私は首を横に振る。声が出てこない。
 胸に湧く想いは、声にならず、涙となって溢れた。

「そんな顔したら、またうぬぼれてまうわ」

 2年前と変わらない相馬に嬉しくなった。

「…ッ、うぬぼれんな」

「やっぱ、可愛ええな」

 耳元で聞こえる相馬の声。
 抱きしめられた。
 大きい胸にドキドキした。

「俺のこと、待ってた?」

「…待ってない」

 耳元で聞こえる声。

「帰ってくるて思ってた?」

「…思ってた」

 大きな手が私の頭を撫でる。

「死ぬかと思ったんやけど、生きててよかったわ」

「それ、洒落んなんない…」

 相馬は笑いながら、私を解放した。
 自由になった体が少しだけ寂しい。

「ねぇ…うぬぼれてもいいかもよ、潤」

「え?」

 驚いた顔。そして、照れたように笑った。
 初めて見た顔。


 まだ、私が知らない顔がある。




 寒い冬。
 舞い散る雪花の中の再会。

 二人の季節が始まる。






Fin