ぺこりと頭を一つ下げて部屋を出る。 これで何度目かなぁ。もう数、数えてなんていられないなぁ。

「ナンドモクラクションナラシタンスヨ。ヨケルッテオモウジャナイッスカ。ミンナドケタノニアノコダケシランプリデ。カンベンシテクダサイヨ。オレノホウガヒガイシャッスヨ」
私はケータイを出し泣きそうな顔でまくしたてる人に向かって歩いて行く。その人の前で話しを聞いてる紺色の背中を、そっと叩く。
振り返ったお巡りさんにさっき取り出したケータイの液晶を見せる。

『私は耳が聞こえません。私のせいです。怪我もたいしたことないので大丈夫です。もう帰ります』 液晶と私を交互に見たお巡りさんは立ち去ろうとした私の手を慌てて掴む。そうしてポケットから出した自分の携帯を打ち始めた。

『名前と歳は迎えに来てもらうから家の電話番号教えて』お巡りさんは液晶を私に向ける。
『大丈夫です。一人で帰れます。』
私の液晶を見ると小さく溜め息をついてまたケータイを打って私に向ける。
『それはダメ。名前と電話』

 はぁ。今度は私が溜め息をつく。
ちらりとお巡りさんの顔を見上げると優しい目だけど私から目をそらさずジッと見てる。