「ねえ、聞いてる?」

そう言っても、こいつはまだ返事をしない。

ただ、ぐるんと首をこちらに回すだけ。

ほとんど真後ろ近くにまで首を回した状態というのは不安定だし、それくらいなら体ごとこっちを向いた方が楽なはずなのに、こいつはそうしない。

首だけ動かす方が楽だと信じてるらしい。

……ばかだ。


なんでこんなばかと一緒にいるんだろう。

思わずため息を吐いたところで、不意にそいつが体を起こした。

ナマケモノだからと言って動きが悪いわけじゃないから、意外にも素早くあたしに近づいてくる。

そうして、床を指差す。

「……なに? 座れってこと?」

返事は頷きひとつだけ。

「はいはい、座ればいいのね、座れば」

もう呆れてため息も出てこない。

諦めて素直に床に正座すると、そいつはあたしの膝を枕にするようにしてごろんと横になった。

「重い」

「うん……」

眠そうな声。

「あんたも、そんなところで寝たら背中痛くなるわよ」

「うん…」

「あたしは脚が痺れるし」

「…痺れれば、いい」

とろんとした声で言ったそいつは、見慣れてもまだ心臓に悪いような綺麗な目であたしを見つめて、

「……そしたら、まだ帰らないだろ…?」