同時刻、月人は相変わらずの笑顔で自分のクラスに到着した。今日はヤケに、人数が少ない気がするが興味は無いので‥余り気にしない。


そんな月人に話しかけるのは‥月人のクラスメートだ。


内側に跳ねたセミロングな髪は亜麻色、妖精のような可愛い笑顔。大きな金色に近い瞳が特徴的で‥クラスのアイドル的な存在。身長も体格も平均的な女の子は、月人の事が好きらしい。鈴のような、可愛い声をした彼女は美術部の女の子。


『夕凪 郷子』という、少し天然な思考をした、甘い物が好きな普通の女の子だ。恭子と同じ名前だというのに、此方の方が随分と人気者らしい。


「おはよう、ツキ君!」


「あ、おはよう。郷子ちゃん‥どうかしたの?何か嬉しそうにしてるけど。」


「うん、ちょっと嬉しい事があって‥ツキ君に一番に言いたくて。」


恥ずかしいのか、頬を紅くして‥はにかんで言う郷子。そんな乙女のような可愛い仕草をする郷子に、周囲の男子は見惚れているが‥月人は全く興味が無いので笑顔で流している。


「実はね、美術部で描いた絵がコンクールで優勝して‥町内の美術館に飾られる事になったの。暫くは渡り廊下に展示されるからって‥もう何人か、渡り廊下に見に行ってるんだ。今から一緒に見に行きたいなって‥駄目かな?」


「うん、良いよ。」


作り笑顔で承諾する月人に、郷子は嬉しそうに微笑んだ。