「おい、朝っぱらから恭子さんに不愉快な思いさせんじゃねーよ、変態生徒会長。」


ドゴッ!と容赦なく、黄泉の背中を踏みつけるのは‥月人だ。あの甘い笑顔と平和な雰囲気が消え‥今の彼は別人のようだ。据わった琥珀色の鋭利な眼、どす黒い笑み、毒舌。その小柄な身体からは想像出来ない怪力と威圧感。二重人格なのか、と恭子や周囲が知ったら‥さぞ驚くだろう。地に伏した黄泉は、不気味な笑い声をあげている。


「大した猫被りですね、月人君‥是非黒百合にも見せたいですよ。」


「は?お前‥死にたいの?」


今にも殺しかねない殺気に、黄泉の背筋が寒くなる。この兎の皮を被った小悪魔は、恐ろしく凶暴で腹黒いのだ。漸く足を退かした月人に、黄泉はグッタリしている。


「まったく、その演技力はハリウッド目指せるんじゃないですか?黒百合には本性を見せないんですね。」


「今本性を見せたら、恭子さんは絶対オレを避けるだろ?せっかく少しは近付いたのに。さて‥可愛い恭子さんの後を追わなきゃ!それじゃ、変態生徒会長様は気絶してろよ。」


直後に黄泉の顔面に上段蹴り‥黄泉の視界は真っ暗になった。