最カノ・アスカ様。

おれはそっと、ポケットに左手を入れた。


瞬間、待ち構えていたかのように、手に硬いものが食らいつく。


……じゃなくて、握られる。


「あはは……手、噛み付かれ……た」

「噛み付いてないしィユッチ、ウケる」


あれ?

なんかこの会話、バカップルっぽくね?


……もう、なんでもいいよ……。


この時おれは、真っ白な灰になっていたに違いない。

どうせなら灰のように、風に吹き飛ばされて消えてしまえたらいいのに……。


なんて、柄にもなくポエマーチックなおれ。


ヤバイ、壊れてきてる……。


しかしこの後。

絶望のドン底にいたおれに、幸福の綱が舞い降りてくることとなる。


「──ユッチィ」

「あぁ……?」

「あのね……悲しいお知らせがあるのォ」

「なんだよ?」

「ウチ、明日ちょっと用事があるから……一緒に帰れない」


…………えッ!?


「マジで!?」

「うんごめんねェ」


『──よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!』

大空に向かって叫びたい衝動を、なんとか抑える。