「よぉ、モテ男!」


教室に入るとすぐに、おれの席の前に座ってる男がニヤニヤ顔で囃し(はやし)立てた。


「うっせぇぞ、ヒロ」


おれは自分の席にドカッと腰を下ろすと、ヒロに軽くガン飛ばす。


だがコイツはそんくらいじゃぁ怯まない。


ウザイくらいに目をキラキラ輝かせながら、おれの机に身を乗り出してきた。


「なぁなぁ、返事どうしたの?付き合っちゃう系?」

「いや、フッた」

「へー」


自分から聞いたくせに、なんだその適当な反応は。


なんて思いながら、おれはケータイをいじり始める。


「でもおれさぁ、ユウがモテんの、なんかわかる気するわ」

「あ?なんだよいきなり……」

「性格いいし〜普通にイケメンだし!」

「普通にって、褒めてんのか?」


おれらは笑い合った。


ヒロは笑うとつり目がちの瞳が、細く、優しくなる。


このギャップに何人もの女がオチてることを、コイツは知らない。


まぁ、ヒロには他校に溺愛してる彼女がいるから、誰も告白とかはしねぇんだけど。


「で、ユウはさっきから何してんの?」