最カノ・アスカ様。

「具合はどうですか?」


ドアは左側だから、寝たままの姿勢でもよく見える。


白衣を身に纏った男が、オレに問いかけた。


でっかい眼鏡に、少し痩けた(こけた)頬。


『お前こそ具合は大丈夫か』と聞きたい気持ちをグッと抑え、オレは答えた。


「具合は大丈夫だけど……全然動けないッス」

「あはは、酷いケガだったからねぇ。右腕は骨折、全身擦り傷と打撲だらけだよ。この子に衝突して自転車ごとぶっ飛んだんだよ、キミ。」


『あはは』って……笑いごとじゃねぇだろが、医者!


酷いケガじゃねぇか!


……ん?

てか……


「『この子にぶつかって』……?」


この子って、どの子?


ベッドの側に立った医者が、上からおれにニッコリと微笑みかける。


「そこに座ってるお嬢さんだよ。逞しい(たくましい)ねぇ。彼女が傷だらけのキミを抱えて病院に駆け込んで来た時は、受付係も絶叫だったらしいよ」


呑気な口調ながら、医者の言葉におれは完全フリーズ。


おれがぶつかったのが、この女……!?


じゃぁなんで、コイツはここにいる?


よく考えると、チャリでぶつかったおれがこんな重症で被害者が無傷なんて、おかしくねぇか!?


てかコイツ、マジでおれのこと担いで(かついで)きたワケ!?

ありえなくない!?

女だぞ!?


それよりこの医者はなんでこんなに冷静なんだよ!