お店を出ると粉雪が舞い始めていた。

「う~…寒い」

私はマフラーを巻き直し,なるべく顔をマフラーにうめた。

そう。

彼が似合うねって言ってくれた,あの赤いマフラーだ。

このマフラーをしているのも,彼を忘れられない原因の1つかもしれない…

私はせっかく巻き直したマフラーを手に取った。

手放してしまえば…

捨ててしまえば忘れられるのだろうか??

このマフラーを見ていると彼との思い出がフラッシュバックする。

優しく細められた目。

ハの字に下がる眉。

低く落ち着いた…声。

ダメだ…

また涙が出ちゃうよ…

『紗帆…??』

ほら,聞こえるはずのない声まで聞こえちゃうよ…

『…紗帆!!』