「どこ行くの」



オレより先にベッドを出て、身支度を始めようとする歩美の腕を掴む。

今日はなんとなく、離れるのがイヤだっだ。



「ちょっとだけサークルの活動があるから、お昼過ぎくらいまで大学にいるよ。春樹は?」


「じゃあオレも行く」


「え?何しに?」


「別にいいだろ、何でも。オレにも用事があるんだよ」



不思議そうに笑う歩美に、また感情が揺らされた。

顔に出てしまいそうだった想いを隠すように、素っ気なく背を向けると

歩美はオレを後ろから抱きしめて。



「夢見た?なんかうなされてた」


「……そうかも」



覚えてはいないけど何かつらい夢。

歩美がどこか、遠くへ行くような気がした。



情けないけど、オレは完全に歩美に落ちてる。

もう歩美のいない時間なんて、考えられないくらいに。