溶かしたチョコレートはピンク色。

ただ問題なのは、一樹はイチゴ味が好きなわけじゃなくて

三角イチゴのキャンディが好きなだけなんだよね。



一樹が部活から帰る時間を気にしながら、キッチンの中に甘い香りを漂わせる。

明日は付き合って初めてのバレンタインデー。

普段は女の子からモテモテの一樹だけど、今年は学校も休みの土曜日だから。


私以外の誰からも、チョコなんてもらわせないんだもん♪



「おーい、亜希〜」



あ、もう帰ってきたんだ。

って、ちょっと!?



玄関前から聞こえてきたと思った声。

よくよく思い返してみれば、聞こえた方向は当然のように私の部屋。



「なんで窓から来てんのよ」



慌てて二階に上がれば、一樹は我が部屋のようにくつろぎながら大きな紙袋を開いてる。

何それ。



「おぅ、亜希。これ食う?」


「ちょこ…れいと……?」


「そうそう、めちゃくちゃもらったから分けてやる。あ、ブタになるからやめとく?」



予想もしなかった一日前の襲撃。


なんで、手が震えてんのかな…
なんでムカムカしてんのかな…


なんで、なんで…



「なんで全部受け取ってくんのよ、バカズキ!」