私が強く腕を引くと、力を抜いていた陽サマが体勢を崩してベッドに倒れ込む。
すごく近くなった距離に、呼吸さえできなくなりそうだったけど
陽サマの切ない顔を見てたら…
「すごく、好きなんです…」
「わかってます」
「でもつい焦ってしまって」
「そうですね」
「困らせたいわけじゃなくて、ただ特別だって思ってほし…」
そこまで言うと、出かかった言葉に陽サマの唇がストップをかけた。
それはいつもと同じ、軽く触れるようなキスだったけど
私にはなんだかとても、優しく感じたんだ。
「今日僕が由利さんをここに連れてきたのは、僕のことを少しでも知ってもらおうと思ったからですよ」
陽サマ…
「その人の見た目だけでは中身までは分からないし、住んでるところというのは一番その人らしさが出ると思うんです」
すぐ横にあるベランダ側の窓からは、ふわふわと落ちてくる雪が見える。
それはとても冷たいはずなのに、陽サマに重なると不思議と暖かそうで
「僕はこの部屋に女性を入れたことはなかったので、ちょっとした特別のつもりだったんですけど」
そう言ってフッと笑いながらも、キチッとした口調と姿勢は変わらないから。
陽サマはやっぱり、すごく素敵な人だと思った。
「由利さん」
「すごい好きです」
「はい、僕もです」
「そうじゃなくて」
「えっ…(汗」
いくら口下手でも、それくらい言えるよね?

