私が陽サマの腕を掴んだままじっとしてると、陽サマはその反対側の手で私の頭をそっと撫でてくれた。
しずかな部屋に、私のドキドキと空気の音だけが響いて。
ふわっと乗せられた陽サマの手が、すごく暖かくて優しくて。
そんなことで泣き出す自分が、また子供のように思えて悔しかった。
好きっていう気持ちだけで泣けるって本当。
私は別に、苦しい思いも辛い思いもしてないのに
こんなにこんなに胸がいっぱいで、どうしていいかわからなくなる。
子供だと思われたくない、
困らせたくない。
そう思ってるはずなのに、出てくるのは自分主義のワガママばかり。
陽サマは、
こんな子イヤにならない?
面倒にならない?
「…僕は由利さんを、不安にさせてますか?」
ふと真っすぐに見つめられて言われた言葉。
私はそれを言われた瞬間に、陽サマが前の彼女と別れた時のことを思い出した。
陽サマの言葉が足りなくて、彼女が陽サマを冷たい人だと誤解したこと。
陽サマは優しい人なのに、口下手なせいで勝手に人柄を判断されてしまうこと。
私は本当の陽サマを知ってるから、こんなに好きなんだって自信持ってたのに
気づけば私まで、陽サマの態度に物足りなさを感じて…
大事な気持ち、忘れてた。
「すみません…、もし僕に直すべきところがあれば」
「違うんです!」

