・・・その姿を見ていいものか分からないが、どうも号泣らしい。

映画が終わりテロップが流れ、僕が大きく伸びようとした時
彼女が号泣のあまりしゃくりながら僕に話しかけてきた。

よくは聞き取れないのだが、

「篠原さん、映画見に来られてよかった。」

と言ってるところは分かった。

僕は彼女を覗き込んだ。

「大丈夫です。大丈夫です。」

と繰り返す彼女が本当に意外で、いとおしかった。


“もっとクールかと思った。”




僕は多恵子に、軽くキスした――。

僕の目をじっと多恵子が見ていた。

「篠原さん・・・。」

と少しだけ甘えるような口調で呼ばれ、僕は再びキスをした。



多恵子の口に舌を入れると、僕の腕を強く握った。

“誰かに見られてるかも。”


でもそんな事は、もうどうでもよかった。

テロップが終わるまで、僕は多恵子を離さなかった ――。