「・・・まだ営業に出たばかりの頃の話です。

ガーターストッキングだと契約が取れたんです、私。
だからジンクスのようになってたかな。

――でも、今なかなか売ってなくて。
ちなみに冬は普通のパンツスーツですけど契約取れました。」

「そうなんだ。」

「あ、でも今日は朝から営業って分かっていたので・・・」

彼女は腰を椅子からずらし、太腿とその半分くらいが隠れる
ミニスカートの裾を手に持とうとし、小指と薬指がスカートに入った。

不覚にも僕はその様子をじっと見てしまった。

“・・めくるのかな。”


「篠原さん――。」

はっと我に返った。

「篠原さん・・・エッチですね。」

もう、開き直るしかなかった。


《男はみんな》

と言おうとしたが、世界の男のせいにしてはならない。


「僕は・・・、エッチだよ。」

「よかった、気が合って。」


彼女は内緒話のように僕の耳を覆った。


「・・・実は、私もエッチなんです。」

離れた多恵子の目を、僕はじっと見た。

多恵子はニコッと笑うと

「さて、会社に帰りましょうか。」

と元気良く立ち上がった。



そうだ、まだ仕事中だった!


・・・ところで、今日のストッキングは?