…でもね。


お父さんだけはね、何も言わなかった。そうかぁって、出来たならしっかり産みなさいって。それだけ。


きっとね、たくさん言いたいことがあったと思うの。マサにもアタシにも。
たくさんたくさんあったと思うの。


でも、お父さんの口から誰かの悪口なんて聞いたことなんかなくて…。


だから余計、申し訳なくて…。


高校中退を許したのは自分だからっていう気持ちもあったと思う。


だってね、お酒飲んで酔っぱらうと、必ず、涙を溜めながらアタシに言うの。


『ごめんなぁ、ごめんなぁ、麻子。あのとき、ああいう手段しか取れなくてごめんなぁ…』

って…。