口を開けて呆けている私に男が近づいてきた。 「嘘でしょ薫君」 女はあり得ないといった表情で“薫君”と呼ばれた男を見ている。 うん、嘘でしょ。 だって私がこの男と初めて会ったのだってほんの数十分前だ。 しかも会ったってゆーか一方的に私が男を見ただけだし。 名前すら知らない相手と付き合った覚えもない。 「じゃあ証拠見せてやるよ」 勝手に見せてろバーカ。 冷やかな視線を男に送ると私の視界を彼が覆った。 この展開は漫画でいうとキス…!? 近づいてくる男の整った顔に思わず目を固くつぶる。