私たちは気休め程度の逃亡かもしれないが 毎週土曜日の夜からはマンションに帰らず 旅に出た。
それは涼介の苛立ちを抑えるためのものでもあった。

《大丈夫、お金なら私が稼ぐよ》


大阪・神戸・時には名古屋や広島・金沢まで足を延ばし その地の一流ホテルに宿泊する。
一流ホテルの方が捕まりにくいと思ったからだ。ホテルも警察も体裁があるだろうという私たちの浅はかな考えだ。
でも なんせ急に思い立って場所を決めるので 予約でいっぱいの時は断られることもあったが その時はラブホに泊まる。
そして 日曜日と月曜日の昼頃までその街で過ごし 一旦マンションへ戻り 月曜日の夜には仕事へ出る。

そんな逃げるような生活すらもが涼介と一緒なら とても楽しめた。