私は涼介の両親に会ってから決めていた“自分の母親に会う”ということを実行しようと思い立った。
再婚した母親と 喧嘩したわけでも何でもない。
ただ面倒くさかった。
本当は色んな人の支えで生きているくせに 私は自分一人で生きているような錯覚をしていたんだ。

もし涼介や私が捕まれば必然的に母親や義父にも迷惑をかけるであろう。
今のうちに一度 会っておこう。

金曜日の夜 店がまだ暇な時間に久しぶりに実家の番号を押す。

「もしもし…お母さん?夏美やけど…」