伊月は困ったような微笑を浮かべると、にこやかに言った。



「お嬢様、何か旦那様にご用があったのではないのですか?」




さすが、30歳越えのベテラン執事だ。




話を切り替え、どちらかに味方することなく、愛梨がここに来た理由をわかっているらしい。



─さすが伊月ね。


と心の中で呟くと、本題を伸次に切り出した。